カスタム系(高額)肥後ナイフ 肥後守のデザインを崩さずに造られたカスタム・ナイフである。有名な鍛冶職やカスタマーは 大抵作っている。肥後守・肥後ナイフのイメージを基本にしたものから 元型はイメージだけになっているものまで幅広く存在する。別な言い方をすれば現在確実に購入できる(はず)の物たちです。
肥後守錬鉄青鋼乱刃 2009年2月三木特産金物センターより入手 ¥21500 

刃材;青鋼(+錬鉄) 柄材;錬鉄 全長162mm 鞘長103mm 刃長62mm 刃幅12mm 刃厚3.2mm 重量88g

柄材は繰り返し鍛接された錬鉄、一部はチキリやブレード(スウェッジ部)まで鍛接され見た目が木の年輪の様な奇麗な模様を造り出している。作者は三木市在住の職人さんとの事で乱れ刃は槌で叩き出して造られている。チキリ部分まで丁寧に作られたカスタム肥後はハズレが少ない。この肥後守の作りの良さは写真で伝わらないか?刃は」物凄い切れ味である。この肥後守で実は気になる点が一つ有る。柄の長さに比較して相対的な刃体部の長さが短かい。もう少し刃が長い方がバランスも使い易さも向上する様な印象を持つ。今回はカメラをNIKON D-80+AF-S NIKKOR18-135mmに換えて撮影している。


後藤渓 作 肥後守 4 2008/02 Design office画房社ナイフ通販事業部で購入¥18000.

刃材:V金10号積層鋼 柄材;カリンコブ 全長170mm 鞘長95mm 刃長75mm 刃幅15mm 刃厚2.5mm 重量31g(シース含まず)

2008年2月中旬、ネットで「肥後守」「カスタム」とかで検索を掛けていたところ、先月までは出てこなかったサイトが有り早速アクセス。それが大分渓遊会 後藤 渓というカスタム・ビルダーの作品を手がける上記のHPだった。サイトは買い物カゴシステムでオーダーが可能で早速御願いした処 ストックが有ると連絡が有り2/22という2並びの日に届いた。下の方で書いたが渓流釣りをされる方の作品は些か小さすぎるきらいが有るのだが この肥後守「は 丁度普通の肥後守の「大」とほぼ同じ大きさである(7枚目の写真最下段が秋水・大サイズ)。握りやすいサイズである。本来はヤマメの腹裂きに使う目的で造られたそうだ。花梨瘤の柄も実に丁寧に仕事がなされてある。刃体は積層鋼をミラーで仕上げてあるので5枚目の写真で何とか御解り戴けるかどうか。肉眼で見ても解りにくい位である。和式に慣れた私などは佐治武士師のように「多層鋼だいっ!」という仕上に慣れているので「あ、勿体ない」と感じる貧乏性だ。刃先の形状も こういうカスタムに有りがちなブレードバックを丸めて刃を直線にする方法を取らず、刃を鋭角に仕上げてある。意外にこの形状のカスタムは少ない。持った印象で大抵自分との相性が解るのが面白い処だが、この肥後守4は最高に手に馴染む。更にこのシースが絶妙である。柔らか目の革を使い中央部分を少し凹状にしてあるのでナイフ本体を格納するとピッタリ収まり 逆さにしても落ちたりしない。ナスカンが付いているのでベルトループに引っ掛けて置くと実に具合が良い。肥後守コレクターは兎も角、カスタムナイフの入門に最高ではないだろうか?シンプルな構造で壊れず飽きず しかもカスタムナイフとしては手頃な価格(税込み送料込みで18000円)だと思う。早速お気に入りの逸品として机上のペン皿に置いてある。御薦めのカスタム肥後守である。

※肥後守4の4は本当はローマ数字だが 文字化けする為4としてある。


古藤 好視 作 カスタム肥後守 2007年11月Yahooオークションで入手 

刃材:ATS34? 柄材:カリン 全長149mm 鞘長90mm 刃長42mm 刃幅14mm 刃厚1.8mm 重量18g(シース込で34g)

JKGで著明なカスタムメーカーの古藤 好視(ことうよしみ)氏の手になる小型で片刃という珍しい肥後ナイフである。Yahooオークションで入手した。 前ユーザーからの情報だが展示会で気に入り直接作者から入手したとのことである。片刃の肥後ナイフは「一刀流」でも類似の物が有るが、カスタムでは初めて見た。(自分で鍛冶屋さんにオーダーした一品物を除く)やはり目のつけ所が似てきてしまうのか?(笑)この肥後ナイフは非常に軽く仕上がっており片刃の上に「裏スキ」まで施してある。シースは手縫いの堅牢な物でありチキリがシースの下に開いている穴から下に出るスタイルである。最後の写真で比較対照にしたのは私の普段遣いの カネ駒青紙利器材特大を磨き上げ研ぎ上げたものである。洋式ナイフの場合「KOTHO」と印されて物が時々Yahooオークションに出ている。


別作肥後守永尾元佑作鹿骨ケース付三木カスタムナイフ仕上 2007年8月Yahooオークションで三木特産金物センターから入手  

刃材:青紙割込 柄材:真鍮+鹿骨(多分前枝の尺骨) 全長188mm 鞘長110mm 刃長80mm 刃幅14mm 刃厚2,8mm 重量76g チキリ穴無 両面凡座金 鹿骨とは真鍮管でソングホール部で接続 太さ:前後径23.3mm 横径14.7mm(細い部分)

意外に有りそうで無かったタイプのカスタムである。肥後守本体に手を加えず骨髄を取り除き溝を掘った鹿骨を そのままグリップにしている。肥後守の刻印を消す様なカスタムは何となくファンには抵抗が有るのだ。ロン・ウルフ社がポールナイフで散々やり散らかしている様にグリップの素材を代えただけで随分なモデル数と価格設定で稼ぐ会社も有るのだが.........、

 其れは兎も角このカスタムは普通の大サイズ青紙割込肥後守に対し その外側を覆う様に鹿骨を使用している。洋式ナイフなら ちょっとセドルチャニーを連想する仕掛けである。鹿骨は恐らく前脚の尺骨の近位端だと思うが 骨端軟骨を剥離・除去し整形、骨髄を掻き出し内部を丁寧に掻爬してある。これは意外に大変な作業だった筈である。哺乳類の長管骨は成獣なら内部の骨髄が脂肪髄(若い個体なら赤色髄=造血している)と言って、相当剥しにくい脂肪分が付着しているし骨端部には複数の腱までくっついている。これを奇麗に除去するだけで大変である。(医学標本ならキシレンで脱脂して水酸化ナトリウムで晒すが それ独特の作り物めいた感じになる)随分と手間だったろうなあ、と想像している。動物の骨は屠殺直後であればナイフで削る事も容易だが時間が経過するにつれカチカチに変化していく。人間も含め動物で一番固く強い組織は「歯牙」である。

 閑話休題 この方法のカスタムは今迄誰もやらなかった事が不思議である。もしもこれを特大サイズの多層鋼や青紙割込で造るとなると大きな牛骨のジグドボーンになるだろう。ちょっと作ってみたい気がする。握って見るとこれが意外にしっくりくるのだ。私は手が大きいため 特大サイズの物を愛用しているのだが これなら大サイズでもぴったりする。完全にカネ駒製肥後守にカバーを被せる形態のカスタムとしては肥後守利光(銀座 木屋製)が存在する。

 刃もオリジナルではなく天然砥で改めて仕上げられた様である。個人的好みで峰とカッティングエッジは別な研ぎにしたいので後日使い減ったら研ぎ直そうと考えている。この部分はユーザー/製作者ともに独特の美学が有るようで新品で購入すると 作者によって まるで研ぎ方が違っていて面白い。私は清源作と山童の研ぎ方が好きである。

 それからこのシースがまた かなりの力作である。異型グリップのカスタム肥後守のチキリを下にして、スムースに収納するのは中々出来る物ではない。これは実に力作のナイフ+シースであった。入手できた幸運をシミジミと味わっている。

こちらは2007年11月にYahooオークションで「ジャンク扱い」として出品されていたI県K市の方から譲っていただいた物です。基本的原理は上記の物と同じ理屈ですが、本革で工夫をされています。革の内側で鳩目に当たる部分を鳩目の大きさに削ってあるため見た目以上にオープンしようがクローズしようが手を離してもズレないのです。落札した当初は素材として活用しようか?と思っていたのですが止めました。例えばヒンジ部分をボルトナットにしたら?とか考えたのですが それよりこのまま革リングを利用してぶら下げた方が携帯には圧倒的に便利です。このポイントを支点にしてあればケースから本体が出てきません。レザークラフトに自信の有る方なら彫刻を施し見栄えを良くするのも面白いと思います。肥後守を愛するマニアは刻印が隠れきってしまう様なカスタムとか刃だけ使うカスタムは 全くやらないのが普通のようです。何故?まあYahooオークションで その系統のカスタムは全く売れず回転寿司になって消えていきますからね。


木鞘肥後拵小刀三寸・両刃 (有)宗正刃物総本社 ¥14170(税込)07年8月購入 

刃材:青紙割込 柄材:槐(えんじゅ) 鞘を払って全長200mm 鞘付き長215mm 刃長87mm 刃幅19mm 刃厚2.6mm 総重量78g

 これは自分で規定した肥後守の基準から明らかに外れた肥後ナイフである。その為 今迄購入をためらっていたものである。

 最近Yahooオークションで古物の肥後守価格までが暴騰し、おいそれと手出ししにくくなり それならネットを使って、新品やカスタム系でしっかりした物を購入してみようと考え 改めてネット世界を探し回って、今迄購入を迷っていた「木鞘拵」を購入して使ってみようか、という気になって購入した。(オクで、特大サイズの錆びた肥後の王様が2千円?呆れるばかりである。200円なら理解できるが)

 閑話休題 箱から取りだした感想は「うわっデカい!」「ありゃ重い」である。最後の写真で一番下がカネ駒の特大サイズで それより小さく見えるのだが木 鞘が太く意外に重いので見かけより遥かに重量「感」が有る。普通に売っている木鞘の切出し小刀と同寸である。刃の形状は間違いなく角刃の肥後守なので奇妙な違和感が有る。刃そのものは「宗正広重」の銘が刻印され 素晴らしい研ぎが施されている。宗正広重はカネ駒OEMということである。

木鞘部分の「槐=エンジュ」は重量感が有り木目も細かく、流石に昔から勉学の木だったり 家の重要部分を飾る木だという感じが解る。古代中国では皇帝の棺を囲う「槨」(かく)にも使われたそうだ。目が細かく空気を遮断する特性が理解されていたのかも知れない。だから鞘を被せた状態で机上に置いて置くと 誰もナイフとは思わないらしい。何か普通の文具に見えるとの事だ。

 実際鉛筆を削ってみると 切れ味鋭いのだがどうもバランスが落ち着かない。悪いのではなく「落ち着かない」のだ。これは握りが太いのに刃が小さくテールへビー まだ刃先に重心が来るほうがマシかな......やはり肥後守は金属柄が似合うなあ、柄が太い時は片刃の切出しが理に適っているのだな、と実感した次第。全体の仕上は素晴らしいから コレクターなら持っていても損は無いと思うが。

追加)07/09/17 ラスト三枚の写真だが和式鍛造で華道等で使われる刃物である。木鞘拵肥後守を見た時に これの存在を思い出したのだがいかんせん高価で新品が買えなかった。Yahooオークションで出たのを目ざとく発見し落札。比べてみたのが追加分の三枚の写真である。いかに木鞘拵肥後守が大きいのが解ると思う。この大きさが最大のマイナス要因だと思う。一緒に写してあるのはカネ駒「大」サイズである。


カスタムナイフ肥後守・伊藤裕翠作 2007年8月Yahooオークションで愛知県の方から入手 

刃材:粉末ハイス鋼ダマスカス 柄材:マイカルタ 全長163mm 鞘長98mm 刃長61mm 刃幅16mm 刃厚2,5mm 重量34g

 何とも上品なカスタム肥後守である。譲って下さったMさんは殆ど使っていなかったそうで傷一つ無い素晴らしいコンディションで、しかも2006年の関刃物祭で製作者御本人から直接購入されたそうである。羨ましいなあ。

 写真だと多少派手に写るが柄材の色調は渋めのワインカラーに近い色調である。刃の模様は本物のダマスカスならではの見事なもので 切れ味はカッターナイフ並に鋭い。カスタムというと妙に凝った揚げ句に方向性を見失ったモノを最近多く見かけるようになったが、このナイフには そのような衒いは感じられず、素材とバランスで勝負している。本来「シンプル」が鉄則だと感じる。

 こういう一見地味なカスタムこそが私の好きなカスタムである。作者の伊藤裕翠氏はJKGの役員もやられている福井市在住のカスタムメーカーで経歴を拝見すると

 1986年 ストック&リムーバルでナイフ製作を開始。
 1987年 V金10号積層鋼を使用し鍛造開始。
 1995年 粉末ハイスR1鋼を使用し製作。
 1998年 粉末ハイスR2鋼を使用し製作。
 2000年 フルタイムでナイフ製作を開始。
 現在は、錆び難く、永切れし実用的でリーズナブルなナイフを目指している。

 との事である。この渋いセンスは一目で好きになってしまった。おどろおどろしいカスタムと違って実に品良く好ましいカスタムである。一見地味で何の冒険的試みも無い代わり刃に拘りをもって造られている。


雪峰刀 Seppouto Knife Snow peak社製 2007年6月購入 ¥24150円 

刃材:白紙二号割込 柄材:ステンレス 全長199mm 鞘長116mm 刃長74mm 刃幅20mm 刃厚2,8mm 重量133g 柄の厚さ平均8,0mm チキリの長さ(チキリ単独部分長)16mm

 重さも価格もヘビー級の肥後ナイフである。とてもオシャレな紙箱に収められている。価格の事は抜きにして純粋に記載してみる。

 まずチキリが付いているが これは飾りであり普通の肥後守のようにワンハンドで開けようとしても小さすぎて開かない。またブレードオープン時の刃の開き過ぎストッパーにもなっていない。

 ロックは無いがスリップジョイントで電工ナイフと同じ仕掛けが施してある。刃をオープンする場合は素直にブレード側面を持って開ける為ワンハンドオープンは不可能。この指を掛ける為にグリップに切り欠きが有るが 切り欠き部でブレードのカッティングエッジが見えている。和式鋼の為エッジが露出していればサビの発生が気になるところだ。

 全体の作りは精巧でありピボットジョイントもマイナスネジを使い緩みに対処している。本体部分の梨子地仕上は高級感が有る。だがソングホールは細すぎる。

 刃だが 箱出し状態で妙なざらつき&ギラつき感を感じる。側面がザラザラしているのに鋼の部分だけが妙にピカピカ光っている。砥石で仕上げるなら こんな銀歯みたいな光り方はしない。

 最後の写真で解る通り大きさはカネ駒の「大」より少し大きい。丁度手に馴染むサイズである。外箱や中に入っていた説明書によると刃物の産地として有名な「新潟県三条市」の製造である。さて評価だが 正直に思う。「高過ぎる」

 このナイフの性格/価格設定は「セミ・カスタム」のつもりだと思う。では本物のカスタムの価格は?この頁すぐ下に松浪チタンが有るが 殆ど同じというかチタンを使ったハンドメイド・カスタムよりも雪峰刀は高価なのだ。

 私の持っている肥後守&肥後ナイフや それ系カスタムの中でプレミアムの付いたのを除けば二番目に高額である。高いので有名なセミカスタムメーカーのWilliam Henry Knives Legacy Collectionでさえ17000円〜23600円である。別に高額であっても それ相応の価値が有れば結構である。ただ価値は刃物本体だけでは決まらない部分が有るので 価格に関してしつこく書くと、現在フォールディングナイフの指標であるバックのフォールディングハンターは立派な革シースが付属して¥8800円が相場である。自分にとって雪峰刀の適正価格は15000円以下である。つまり どう贔屓目(かなり私は和式に好意的なのだ)に見ても それ以上には思えないのだ。せめてチキリを大きくしワンハンドオープン出来る様にするか 出来ないならチキリは不要だ。

 それと しっかりした革ひもが通る大きさのソングホールは欲しい。せっかくの刃材を安っぽく見せる仕上げ(刃付けを浅くし過ぎ)は止めるべきだと思う。それに133gも有るナイフをポケットにゴロンと放り込むのだろうか?異様に頑丈なポケットでないと破けるぞ。チキリが引っ掛かるし。

 この雪峰刀に関しては「和式ポケットナイフ」を作りたかったのか「現代風三条・越後守」を作りたかったのか解らないのだ。これで三木刃物にケンカを売ったなら単なる陳腐な場外乱闘だ。

 雪峰刀ではチキリにはデザイン上のアクセントしか持たせていない。三木市で生まれた肥後守のチキリには絶対の存在意義と絶対的な歴史が存在する。単なるアクセントの為の付属物ではない。デザイン上付けてみました、では日本が産み育てたトラディショナルな工業デザインに対し侮辱に値するかも知れない。

 手に取って繁々と見ると 多分和式のモダン・ポケットナイフを作りたかった様に見える。意外に知られていないが 確かに電工ナイフのスリップジョイントも日本オリジナルの仕掛けである。これを使い 熱処理の難しい白紙二号を刃に採用し加工の難しい梨地ステンレスのグリップに要所を押さえた邪魔にならないピン等 成程高くなっちゃったんだろうなあ、と理解は出来る。でも それなら「チキリは不要だろ?」

 この価格帯で戦う相手はWilliam Henry KnivesやLONE-WOLF Knivesであろう。つまりカスタム寄りのファクトリーナイフを制作しているメーカーである。(彼らは輸送費や関税を払った価格が同じ程度だ)戦えるのか?雪峰刀..........

 また重量級ポケットナイフに必須のポーチやクリップは考慮しなかったのだろうか?オシャレな箱に同封されていた説明書を熟読すると親子で使う(一回り小さな子供用?の物が有る)物だというが 本体価格2万円で重さ100gの子供用ポケットナイフを持たせる親?どんな家族だ それ?

追加 07/06/26

 最初の写真は雪峰刀を普段遣いで二週間使ったら 刃がフォルダの内側壁に当たる様になった証拠写真。別に手荒に扱ったりした覚えは無いが段々ズレていって遂に当たる様になった。二万円を越えるフォルダー型ナイフでは非常に情けない現象である。もう十数年使っている110は全くズレは起こしていない。相当手荒に扱ってるのだが。

 これで少し愛想が尽きかけ 今迄気になっていたギンギンギラギラの刃を全面研ぎ直す事にし、人工中荒砥から本山大村砥、そして三河白名倉で当りを付けたところである。ベタ研ぎに直すのも大変である。今夜はバテたので ここで記念写真.。砥石は名前だけ聞くと凄いけどこのショップ(富士鳩)さんからの出品をYahooオークションで入手したんで無茶苦茶安くゲットしてます。この刃先の形状を角刃かトンガリにして黒打ち仕様に代えチキリを取るか、逆に山童の様な大型にしたらどうだろう?


松浪力也作「チタン肥後守」 2007年6月ナイフショップ「つぼい」にて購入¥22000 

刃材:ATS34 柄材;チタン 全長175mm 鞘長100mm 刃長75mm 刃幅17mm 刃厚3,2mm 重量73g 柄の厚さ平均8.9mm チキリの長さ(チキリ単独部分長)18mmライナーロック ベルトクリップ付

 ご覧の通り洋風の味付けの濃いカスタム肥後である。或る事情で箱入りのまま御蔵入りしたままである。

 このナイフは、ナイフショップ「つぼい」にオーダーを入れてから約二ヶ月で入手。

 カスタム・ナイフとしては平均的だと思うのだが その後が最悪。

入手直後に偶然覗いたYahooオークションに松浪氏本人の出品で「新品が18000円から」で出品されているのを発見し思わず唖然とした。こういう行為は自らの評判・信義を悪化させると思う。正直 ムカついた。

 無名時代から御世話になったショップに対し何か不満でも有ったのか?それとも金欠か、カスタマーは決して自分の力量だけで世に認められた訳では無い。卸問屋やショップの厳しい目によって成長していくものだろう。勿論その中には付いていけずに脱落する人間も居る。しかし色々な意味で自分を育てて呉れ その力量を評価してカスタムを依頼したショップの依頼品と同じショップ・カスタム モデルを そのままYahooオークションに安値で流す行為は決して頷けない。

和式では「陰打ちを流す」イコール「店をたたむ」「財政破綻した」という意味にとられるのだ。

 物自体は実に精緻なカスタムナイフである。精度も申し分なく可動部分のタッチも何一つ不満足な部分は無い。チタンという材質の所為か見た目よりも非常に軽い。写真にうまく写っていないがチタンのプレートの間に樹脂製のインサートが有るが これが一昔前の「ベークライト板」そっくりである。本当の材質は不明である。手間のかかるブレードの削り出しもシャープで左右の狂いは全く無い。

 個人的な好みから言えばクリップは少し大き過ぎる気がする。またはアクセントとして色調の違う金属を使いメリハリを付けても良いか、と思う。全体のサイズだが殆どカネ駒の「大」と同じである。いかにも手に馴染みそうなサイズである。原カスタム肥後と完全に好みが別れてしまいそうだが原氏の物は伝統に従いロックを保たず小振りに仕上げた物。松浪氏の作品は あくまでもカスタムの素材として肥後守を選んだ物と思う。

 三枚目までは「原・肥後」との比較。わずかに原氏の作品が小振りである。4枚目は一番下がカネ駒OEMの竹虎肥後守の「大」サイズである。5枚目は一番下が「正晶守」6枚目は一番下がWilliam Henry Knives 最後は三木の作家である藤原 敏氏作の白紙本焼のカスタムである(詳細はこの頁最下段)私が現在一番使用しているカスタム肥後でもある。

 さて 皆様の好みは??私は購入こそしたが どうしても使うと損した気分になるので保存したままになっている。造った人間の黒い心を見てしまうとカスタムの価値は99%喪失するものだな、と つくづく そう思っている。


スーパー肥後守・武田刃物工場 2007年4月末購入 ¥18900(税込)

刃材:青紙スーパー割込 柄材:真鍮 全長195mm 鞘長112mm 刃長82mm 刃幅23mm 刃厚2.5mm 重量83g チキリ穴無 両面凡座金

 ちょっと変わったシルエットを持つカスタム肥後ナイフである。これ御薦めのカスタム肥後である。特に自分で研げるユーザーにはベストチョイスかも知れない。

 たまたま目にしたHPの「今月の刃物」が このスーパー肥後守であったので ちょっと高かったが即購入。見慣れた肥後守よりも身幅が大きい。これは刃を出してみると良く解るが 刃の付根が幅も厚さも先端より大きく作ってあり これを格納する為に鞘の幅を大きく取り 鳩目を柄の中心よりもチキリ側に寄せてある。だから握った状態では刃が他の肥後守よりも引っ込んだ感じになる。

 バランスが非常に良く、チキリの長さは「山童」並に長い。(=33mm・普通の肥後守が12mm位)スペックで示した値は全て刃の付根部分を測定してある。刃に刻まれた文字は「新見ハート松水AS」である。新見は製造元が岡山県新見市に有る処から、作ったのが武田松水氏である。ただ刻印を打ち込むなら鞘にした方が品が良いのでは?と思う。氏の略歴はHPの紹介を読んで欲しい

 閑話休題 箱出しで相当鋭い刃が付けてある。刃は折り畳んだ状態でキチンと鞘の真ん中に来ており、オープン動作も変な引っ掛かりも無く気持ちが良い。早速鉛筆削りにチャレンジしてみると、いつもの使い慣れた刃の位置よりも数ミリ刃が指に近い位置に有る為、少々慣れを要した以外は実にスムースで使いやすい。刃先は正直もう少し尖ってても良いかと思う。全体的に丁寧でしっかりした作り込みをした肥後ナイフである。

★追記)2007年5月14日

 上記記載の後、どうも気になっていた刃の側面の傷を消そうと研ぎ上げてみた。するとどうだろう 私が持っている肥後守&肥後ナイフの中でもベスト1の途轍も無い切れ味に変化したではないか!まるでカミソリである。あまりの変貌に驚き ここに写真を掲載する次第である。箱出しの刃面と比べていただきたい。現在このスーパー肥後守は本当に抵抗無く「ヒゲが剃れる」のだ。(本当に剃れました)

 三枚目の写真は「カネ駒青紙割込利器材仕様」の物と、本当に割込鍛造をした物との違いを解り易く写真にした物である。本当に手で割り込んだ物はご覧の通り「地金と鋼の線」が波を打ったように見えるのに対し、利器材使用のカネ駒の物は鋼の線が見事に一直線になる。

 自分は研ぎに関しては完全なアマチュアな上、自己流なので 此処に書くのも気が引けるが一応記載すると、まず何はともあれ#1000のキング合成砥で表面を整える。気が向けばその後#3000、#5000の合成砥石で研ぎ上げて そこで御終いにする事も有れば、根性を入れて更に浅黄の巣板(勿論木っ端である)に三河白名倉の目白か牡丹か天上(オクで三コ2200円だった)で徹底的に研ぎ上げる事も有る。

 必ず下の番手から研いでいくのは順守している。多層鋼の様な物は最近オクで入手した「刃文砥石」という便利な砥石を使っている。これは#800相当のアルミナ系の中砥だが砥汁がすぐ大量に出る。これで或る程度仕上げた刃を撫でるように研ぐと刃文が見事に浮き出すのである。うっかり多層鋼をピカピカに研いで凹んでいる方々は御試しになる価値は有る。


「原 幸治・洋式カスタム肥後守」(「参州一番」経由でオーダーし制作していただきました)¥28000円

刃材:カウリY 柄材:ステンレス 全長165mm 鞘長95mm 刃長70mm 刃巾13mm 刃厚2.2mm 重量90g

 日本有数のカスタムナイフビルダー「原 幸治」氏のカスタム・肥後。オーダーしてから手元に届くまで約7ヶ月かかりました。

 この「原・肥後」の存在は宗正刃物等のカタログで知っていましたが、中々手が出ず 三年間迷ったあげくオーダーした物です。だって勿体なくて絶対使えないじゃないですか。でも届いた物を見るなり「んーこりゃあ安かったんじゃないかな?」という位 手が掛かっていました。何より「とっても奇麗」なんです。どこを取っても手抜きの欠片も無く、シルバーの部分が光っています、ブレードの左右は完全に揃っており、ベベルストップの左右差は無く、これらはサイズの実測値を見ても判る通りです。工作精度が恐ろしく高い。ブレードのミラーフィニッシュの奇麗なこと。勿体なくて やっぱ使えません。

 カウリYって何だ?と調べてみると「カウリY(大同特殊鋼)HRC・63~64 カウリXの兄弟鋼の粉末鋼です。 特徴は、刃先が欠けにくく、特に錆びにくい、鮮明な鏡面仕上げができます。 ダイバーナイフ、アートナイフなどに最適です。カウリYはステンレス系です」とある。じゃあカウリXは?「カウリX(大同特殊鋼) HRC・64~68 溶鋼を噴霧して製造した粉末を、特殊な焼結法により、徴密に固められた刃物用合金 鋼材です。粉末状態で凝固させたので、従来法で作られた刃物用鋼材に見られる巨大 な炭素物が無く金属組織も微細で均一です。 このため、ハイカーボンにもかかわらず熱処理後高硬度・高延性を有しています。 特徴は、吸い込まれるような鏡面仕上げ、HRC67の高硬度でカミソリのような刃 が付けれ驚異的な切れ味が出せます。カウリXはダイス鋼系です。」とあった。鋼で粉末って?と思ったら こういう事だったのですね。(ちなみにここで調べました)

 グリップに筆記体でK-Haraの文字が控えめに刻まれています。(2枚目写真)本来は原氏が自分で使うために制作したものだそうですが、コレクターには咽喉から手が出るくらい欲しい物でしょう。その価値は絶対に有ります。カスタム系肥後ナイフは目の玉が飛び出る価格の物が多いのですが、原肥後守は何とか手の届く価格です。また原氏は自分でYahooオークションに安値で流したりしない。価値を良く理解しておられる。


「奥球磨・肥後小刀・片刃」 熊本・上米良鍛冶屋製 私がデザインして造っていただいた物

刃材:安来鋼白紙2号 柄材:鉄 全長303mm 鞘長168mm 刃長133mm 刃巾23mm 刃厚3.8mm 重量217g チキリ穴無 刻印無

どうも単に集めているだけでは欲求不満になり 自分だけの肥後ナイフを作っていただいた。「肥後」とは現在の「熊本」の事だから、熊本を探せば本物の「肥後ナイフ」を制作している鍛冶屋さんが有るに違いない。とネット上を探して 上米良鍛冶店(かんめらと読みます)に辿り着いた。

色々な刃物の依頼を受けて制作する「誂え鍛冶」のお店です。メールを何度か交換し、こういう物を作りたいが、と御願いし わざわざ片刃で鍛造を御願いしたものです。本来の肥後守は必ず両刃なのですが 戦後 片刃の肥後守が市販された前例が有ったそうです。最初は サビの問題が有るからステンレス柄の方が良いのでは?との御意見でしたが、私が鉄柄に拘りました。松炭で鍛造する刃の美しい事。チキリの処理が奇麗で丁寧なのが判ります。また片刃の為 裏側は全面 白紙二号の付け刃になっています。


「奥球磨・肥後小刀・墨流し仕様」熊本・上米良鍛冶屋製 私がデザインして造っていただいた物

ボウイ型特大

刃材:白紙割込(墨流し)柄材:黒染鉄 全長345mm 鞘長194mm 刃長145mm 刃巾33mm 刃厚5mm 重量348g チキリ穴無 刻印無 オリジナルではジョイント・ピンは鳩目でしたが 刃の重さの関係でボルトナットに変更しています。

ボウイ型大

刃材:白紙割込(墨流し)柄材:黒染鉄 全長275mm 鞘長157mm 刃長115mm 刃巾30mm 刃厚5mm 重量248g チキリ穴無 刻印無

2005年11月に私がデザインし それだけではイメージが伝わらないだろうとペーパーモデルを造り、上米良さんに送り、その後細部について何回かメールの交換をし出来上がったのが2006年1月末、予想していたよりも早く出来上がった。現在上米良鍛冶屋のHPに その紙型ごと公開されています。最後の写真が私の作った型紙です。なぜこういうデザインにしたか?というと、現在流通している肥後守・肥後ナイフは殆ど両刃の角形か笹の葉型位で選択の余地が少ない。大きさも判で押した様に「特大」「大」「中」ばかり。肥後守を、シンプルなフォールディングナイフと割り切って考え、最もインパクトの有り遊び心の有るブレードデザインは何だろう?と考え 自分の洋式ナイフコレクションをひねくり回している内にBUCK社の「#916-BOWIEナイフ」に目をつけました。シース・ナイフ独特の刃形状ですが食い付きの良いポイントのデザインと深く抉ったスウェッジの形状を肥後守・肥後ナイフに取り入れるという冒険をしたのが これらの大型肥後ナイフです。

身幅が広く長いブレード、鋭く反り返ったクリップ状のポイント(刃先)、オリジナル・ボウイナイフは英国シェフィールド製のブッチャー(肉屋)ナイフだったそうだ。伝説によればボウイの兄レジンがバッファロー狩で半矢になった獲物にブッチャーナイフで立ち向かったが重傷を負った、これに懲りて鍛冶屋に大形で頑丈なナイフを打たせたのが始まりだそうだ。しかしオリジナルは行方不明、コピーと称する物がスミソニアン博物館に収められる程 アメリカ人にとってボウイ・ナイフはフロンティア・スピリッツの象徴なのである。

和式ナイフでもBOWIE型類似の刃先は見かけるが、スウェッジ(逆刃)を大きく抉ったデザインは、割り込む鋼材の関係で大きな物は難しいとのこと。棟先を鋭角に落し裏刃を付けるのは「猪落し」や「ナガサ」等「猟刀」に多い。良し!それじゃあ そいつを日本人の産んだ日本の肥後守・肥後ナイフで作ってしまおう!というのが これ。もちろんこれでバッファローとは闘えないが牛肉の塊位なら寸断できる。

更に 単材(ステンレスが殆ど)ばかりで面白みの無い洋式ナイフに対し、日本の鍛接技術の粋を集めた「墨流し」(多層綱)で鍛っていただこうと決めた。もっとも勝手に決められた方はホント良い迷惑である。

8枚目上から二つ目は前に作っていただいた「片刃肥後ナイフ」である。これも墨流しではどうか?と提案されたのだが片刃の為 せっかくの積層綱模様が片面だけになるため止めておいたもの。ストック&リムーバブル法で作った洋式ナイフは「削り出す」方法で、言わば「彫刻」と言える。それに比べ、鍛冶職が 鍛造で作り出す和式刃物は、言わば「塑像」である。R・W・ラブレスやランドールの亜流に堕すどころか コピーである事を売り文句にするナンタラメイド洋式ナイフとは、種族が違う。気になるお値段だが そんな仰天する様な価格ではない。興味の有る方は「上米良鍛冶刃物店」まで。さて次は どの様な物を造っていただこうか もう思案中なのである。


奥球磨・肥後小刀・上米良鍛冶屋製 ¥8000 

刃材:白紙割込 柄材:黒塗鉄 全長295mm 鞘長160mm 刃長125mm 刃幅24mm 刃厚3.8mm 重量188g

2006年末にオーダーし、今年1月入手したカスタム大型肥後ナイフである。上記九州熊本にある上米良鍛冶店作だが私個人のオーダー一点物ではなくお店のHPから購入する事が出来る。個人で造っていただいた物より一回り小さいが それでも超大型肥後ナイフである。がっちりした造りで切れ味は同じサイズの洋式ナイフと段違いで「切る」という感じがする。洋式のボウイだと「壊す」様な感じがするが 和式のこれは、対象物を撫でるとスッと切れている感じである。肥後守ファンなら一本所有していても損はない。なにせカネ駒多層鋼青割の6割程度の価格で買えるカスタムである上米良鍛治屋のHPは ここ。ちょっと気になっている点が一つだけ有るので最後に記しておくと、普通肥後守&肥後ナイフの「鳩目」は「柄」に固定されているが上米良鍛治屋製は逆に「刃体部」に固定してある。なので刃をオープンする時に鳩目も同時に回転する。新品の内は問題ないが古くなって鳩目周辺が緩くなった場合に 鳩目やカシメを叩いても効果的に修復が出来ない。やはり刃体部の穴を広げ、ピン(鳩目)は柄材と固定させるほうが良いのでは?と思う。一番上の超巨大型ボウイ肥後はピンが緩んだのを切っ掛けにし手元に有ったボルトナットに改造した。緩んだらネジを締めれば良いというのは 既に「正晶守=まさののかみ」が製品化している。

話は変わりますが、現在「平田ナイフ」から「肥後守」になった頃の極初期肥後守を再現しようと文献を漁っているのです。縦折り・笹の葉型の一見ダガー形状の刃体を持ち鉄柄だったようですが 或る程度固まったら、こちらにお願いして造っていただこうかな?と妄想を逞しくしています。何しろ資料が少なく難渋していいます。


佐治武士作「越前守」 15960円 e-刃物

刃材:白紙多層綱  全長 195mm 鞘長110mm 刃長80mm 刃巾18mm 刃厚3.5mm 重量110g 

これは佐治武士氏お得意の「白紙多層綱」版の越前守。佐治武士氏は三種類のモデルを造っており、これがベーシックな越前守である。「宝刀シリーズ」は刃先の形状で5種の型が有る。肥後守・肥後ナイフでは「白紙」を使用しているモデルが意外に少ない。オリジナル肥後守よりも柄の部分が分厚く大きい。チキリも大きく真四角な形状で ジョイント・ピンも相当太い。かなりのヘビー級だがバランスは良い。これも勿論クラッド材仕様だが「ベタ研ぎ」にしようとして頑張ってみたが とにかく硬い。購入当初から「グラインダー痕」が目立っており、これを消そうとかなり努力しましたが全然消えない位固いです。逆に切れ味は落ちません。これも味わいだと諦めました。高額肥後守としては特に癖が少なく、見ただけで「佐治武士作」と判る多層鋼仕様です。


佐治武士作「宝刀越前守」 17850円 e-刃物

刃材 柄材とも:青紙有色多層綱 全長193mm 鞘長110mm 刃長82mm 刃巾16mm 刃厚3.5mm 重量100g(宝刀越前守は刃先のデザインの違いで5種類有ります)

当代一の人気鍛冶にして伝統工芸師。和式ナイフ界で知らぬ者の無い佐治武士氏も「越前守」という、氏ならではの多層綱/有色多層綱を使った肥後ナイフを作っています。余談ですが「越前守」と聞いて「大岡越前守忠相」を連想してしまいました。加藤剛 竹脇無我 宇都宮雅代の初期シリーズをリアルタイムで見てました。故大坂志郎氏の村上源次郎が好きでしたね。小津安二郎の「東京物語」にも出てましたっけ。閑話休題

一つはシンプルな「多層綱越前守」そして「宝刀越前守」は青紙有色多層綱という 銅や真鍮の色が奇麗な層になるクラッドメタルで全体を作るという派手なものです。白紙の刃は一回研ぎ上げると長切れするし好きなのですが うまく研げるまで修業が要りますね。見た目チャラチャラしてますが結構硬派な肥後ナイフです これ。

武生特殊鋼材のクラッドメタルの技術力と佐治武士氏のコラボレーションで生まれた宝刀シリーズだが、とにかく見た目が派手なところが好きである。形状が定型化せざるを得ない肥後守・肥後ナイフですから 色彩に変化を、と考えたのも理解できます。大体「金属に色を付ける」という発想は宝刀シリーズの特長ですし特異な点です。ただ使って刃が緩んだ場合に 真鍮柄だとペンチ一発で直せるのですが、越前守は鞘が分厚く「たたき台+ピンポンチ」でガンガン叩かないと直りません。高額肥後守なので ちょっと怖いです。先端が凹になったポンチがホムセンで売られていますから この越前守系を購入する方は一本有ると重宝します。

ただこの宝刀系のナイフ一般に言えるのですが研ぐのが容易ではありません。温度処理がしっかりしており硬く 更に色を大事にする為、赤レンガの#1000等で研ぐと刃面がザラザラして 折角の色調が台なしになります。自分は赤レンガで研いだ後カッティングエッジを残してリューターにバフを付けてコンパウンドで磨いたり 紙やすり(耐水ペーパー)の1500〜2000番で水研ぎ処理しています。邪道だとは思いますが天然の無地黒梨水浅黄で仕上げても購入時の美しさが消えてしまうのです。まあ このナイフを研ぐまで使う人間が少ないのかも知れません。


佐治武士作「天弓肥後拵小刀(小)」宗正刃物18900円 

刃材:青紙割込レインボーダマスカス 柄材:刃材と同じ 全長140mm 鞘長80mm 刃長57mm 刃幅14mm 刃厚2.8mm 重量62g チキリ穴無 両面凡座金

宗正刃物以外では扱っていないカスタム肥後ナイフであり 宝刀越前守は宗正刃物では「天弓肥後拵小刀」という別な名前で売られている。天弓肥後拵小刀は宗正刃物以外では入手不能なものである。シースの作りが非常に丁寧で好ましい。使いやすさは少し小さすぎるきらいがある。ただ佐治氏らしく前衛的な素材でコンパクトにまとめられコレクターならば是非持っておきたい一本である。是非大型にも同じ形状のシースを付けて欲しい(もしくは別売りとか)。肥後守&肥後ナイフはチキリ部分が突出する為ポケットに放り込んでおくと布地を裂いてしまう可能性がある。カスタム系肥後ナイフなら是非標準装備して欲しいアイテムである。


佐治武士「越前守・白紙割込・黒仕上」 e-刃物で購入 15960円

刃材:白紙割込 柄材:鉄 全長195mm 鞘長110mm 刃長80mm 刃巾19mm 刃厚3.5mm 重量110g 

ネット上でも取り扱いが非常に少ない「越前守黒仕上」である。e-刃物以外のサイトでは見た事が無い。これは佐治武士氏御得意の多層綱ではなく、白紙割込仕様の刃と鞘の全てをマットブラックに塗装したものである。肥後ナイフ版「タクティカル」という感じ。つや消しの黒塗装が実に良い味を出している。個人的には こちらの方が好きだ。使い込んで色落ちするのが嫌なら普通の「越前守」だと思うが この黒仕上は渋好みである。越前守シリーズは全て柄に刻印が無いので 余計に黒塗装が似合う。宝刀の華やかさの対極である。

越前守シリーズは宝刀も含め結構硬派な肥後ナイフなので こういう風情も悪くない。ただ研いだときに黒塗りがハゲるのが難点だが これは自作ナイフ用品を扱うショップに染める為の塗料が売られている。1600円〜である。


「NEW晶之守」(まさのもり)四代目晶之氏作「トヨクニ」にて購入。13125円

スペック 刃材:6A綱槌磨 柄材:黒檀+ステンレス 刃長80mm 全長185mm 刃厚3mm 重量69g 

NEW晶之守ですが、一見すると洋式ナイフに見えます。私が勝手に定義した肥後守の条件からは「錆びない刃(ステンレス)」「柄はステンレス板とボルトナットの複合構造」「フレームロックシステムが有る」と片っ端から条件破りをしてくれています。しかし「チキリ」がちゃんと有り、6Aですが鍛造の刃を持っています。晶之氏が作りたかったのは肥後守の「現代に有るべき姿」なのかも知れません。そうでなければ ただの「鍛造の刃とチキリの有る洋式ナイフ」のどちらかでしょう。

しかしここまで洋式寄りの姿になると チキリの必然性が無くなってしまいました。ブレードにサムノッチを付けても違和感は有りません。クイックリリースの為の出っ張りです。肥後守・肥後ナイフなら「出た刃の固定」という大事な役割が有ります。更にライナー(フレーム)ロックを付けた為 安全性は高まりましたが、ワンハンドで閉める事が出来なくなりました。肥後守は良くも悪くも「勝手に開け閉めできる刃物」なのです。つまり肥後守の姿を残す必然性が無い「悲しき自己否定ナイフ」に思えるのです。作者はチキリを残す事で肥後守に拘ったのだ、と思うべきなのでしょうか。それとも洋式ナイフにもチキリが欲しかったのでしょうか?この晶之守は刃の材質と柄の仕様の違う多種類が存在します。このタイプよりもステンレスボディにクリップ仕様のほうが すっきりしていて良いかも知れません。(以前トヨクニでは「まさのもり」と表記していましたが最近「まさののかみ」に替えたようです。種類も相当増えました。)自分としては下記の単なる晶之守のほうが好ましく感じられます。

最近WEBサイトでグリップ材だけを変えた商品を大量に販売しはじめました、柄材と刃材のバリエーションだったら意義が有ると思うのですが?どこぞの洋式ナイフメーカーみたいです。


「晶之守・両刃・磨・24金メッキグリップ」トヨクニで販売している「晶之守」のNEWの付かない方です。15540円

刃材:青紙二号ダマスカス31層 全長167mm 鞘長100mm 刃長67mm 刃巾15mm 刃厚2.5mm 重量45g(イニシャルを彫って貰いました)

こちらは非常にトラディショナルな肥後守の形状を残していますが、随所に作者の創意工夫が感じられます。何より柄が豪勢に24金メッキ!ま 好き好きは有るでしょうが意外に似合います。「黒」が好みの千利休だって豪華総純金造りキンキラキンの茶室を作りましたしね。二畳半の茶室も作ったけど。(ただ柄材の厚さについては 下記緑グリップを参照のこと)使い勝手では このチキリの長さが実に安定しています。「山童」は長大なチキリがデザインポイントですが、普通のナイフケースには収まらない欠点が有ります。カネ駒製は基準ですが 仕上げがイマイチ宜しくない。丁度良いのが この晶之守の長さと巾になります。また仕上げも非常に丁寧に鍛接され研摩されています。刃の形状は好き嫌いの分れる処でしょう。

特記すべきは ジョイント・ピンにカシメを使わず「ヘキサゴン・ボルト」を使っているところ。これだと緩んだ場合の微調整や分解清掃が非常に楽に出来ます。ボルトそのものは本家よりも細目ですが これなら何も問題は有りません。気に入らなければチタン製ボルトにでも交換すれば良いのです。刃先の形状は角張った独特?の形で31層の積層綱です。箱出しの状態での切れ味がヨロシイ。この晶之守も高額肥後ナイフですが 随所に見られる創意工夫と 24Kメッキの柄というカスタムポイントが目立っています。また「キット販売」されているというのも他のカスタム系との大きな違いです。


「晶之守・両刃・磨・緑グリップ」トヨクニで販売している「晶之守」のNEWの付かない方です。12600円

刃材:青紙二号ダマスカス31層 全長171mm 鞘長102mm 刃長67mm 刃巾15mm 刃厚2.7mm 重量44g 12600円

これは「トヨクニWEBサイト」上では「緑色」グリップと表記されている物である。片岡義男氏ならば「オリーブ・ドラブ」と表現するだろうな。米軍等で良く使われる あの緑色である。私はサイトの写真を見て「ブリティッシュ・レーシンググリーン」を勝手に想像していたのだ。だから少し明るめのウレタン塗装の緑色に驚いてしまった。こちらの刃は多層鋼の筋目が上記の物より更に見えにくい。逆に刃付けは とてもシャープで硬い机の上に置いたティッシュを手で抑えずにスッと切る事ができた。これを箱出しのままの状態で出来たのはLegacy Collectionだけである。ただ どうなのかな?と思うのが あと2940円出せば「金メッキグリップ」の晶之守が買え、あと525円出せばNEW晶之守が買えるのだ。微妙な価格設定である。

もっと気になる点だが、カスタム系肥後守の購買層は、多少高価だろうが安っぽい仕様を嫌う。この晶之守だが柄材の鉄板が厚さ0.5mmと薄い。元祖カネ駒の真鍮板は厚さ1.0mmなので 薄く頼りなく感じる。気になって他のものを測定すると、同じ鉄柄でカネ駒OEMの「一刀流謹製」も厚さ0.5mmで同じ厚さであった。500円そこそこの肥後守とカスタム系肥後守が同じ厚さであって欲しくない。試しに1/10mmまで計れるデジタル・ノギスで計った柄材の厚さ測定値は以下の通りである、NEW晶之守が1.0mmのステンレス板、山童(大)2.2mm 山童(小)が2.0mm、越前守1.8mm、球磨・肥後型小刀2.5mm 原・肥後守2.1mm、清玄作は全て真鍮板で1.2mm、つまり晶之守はカスタム系では最も薄い柄であった。

晶之守・金グリップは「24Kメッキ」という付加価値が有り それが購入ポイントになっているのだが いかんせん この緑色グリップの方は、いくら高級ウレタン塗装であっても 学童用肥後守とスペックが一部同じということになる。カスタム系高額肥後守にあっては こういう瑣末な点こそが重要な購入ポイントなのだ。例えて言うなら「スポーツカーに乗合いバスのビニールシート」が付いている様なものだ。事の本質は500円で買える物に対し25倍の金額を自己満足の為に支払う為の「依代」が必要なのだ。本革ケースを省略してでも柄材に凝るべきであったと思う。次回作を造られるなら是非 柄材の厚さや材質にも注意を払っていただきたいのである。


「清玄・特製肥後守」直刀両刃  12600円 (株)宗正刃物総本社

刃材:青紙二号割込鍛造 柄材:真鍮 全長175mm 鞘長100mm 刃長70mm 刃巾16mm 刃厚3mm 重量65g

高級刃物で有名な東京秋葉原にある「宗正刃物総本社」で 大変気になる肥後守が販売されています。「清玄特製肥後守」という、元々作者が自分の為に作ったものとのこと。清玄さんの本職は、仏師や鎌倉彫の職人さんの道具を作る注文誂刃物鍛冶と紹介に有ります。

師の略歴を御紹介すると:越後与板の河清刃物――清玄(本名川野清松氏)
彫刻刃物の第一人者。のみ造り50年創作刃物の名工。現在、木彫のみ、彫刻刀を主体に木に愛着を持ち心技体を刃物にうちこむかたわら色々な創作刃物を生み出しておられます。越後与板がほこる兵部のみの伝統を受け継ぎ、刃物一筋に生きる事は、鍛造火造りと厳しい世界だけに可能な極意であり、いずれの作品も清玄の自信の逸品。

ちなみに宗正刃物というのは高級刃物・和式刃物の有名専門店です。(ここでしか扱わないので有名な「和式ククリナイフ」が凄いですよ。

小振りで一見華奢なのですが その切れ味は、箱出しで産毛が剃れます。鞘も これと言って何の変哲も何の仕掛けも無いのですが、不思議に動きがスムースなのです。(後で聞きましたが当り外れが有るとか)チキリの描くラインが絶妙で仕上げも 実に丁寧な砥石の掛け方です。刃は青2号の割込鍛造、鍛造痕が実に味わいを醸し出しています。何も変った仕掛けを施している訳でもないのに全ての動きに無駄や引っ掛かりが無いのです。成程プロ用道具を誂えているというのは こういう仕事なのか、と納得。真鍮の鞘も決して分厚いものではないのですが 開閉に無駄な力が要らず かといって緩いのでもなく 何故これだけで抑えが効くのか判らない様な微妙な調整がされています。標準サイズで 特大を見慣れた目には小振りに見えますが、虚仮威し的な部分の全く無い、何も変った事をしていないのですが とても上品なのです。最近発売された黒打馬針肥後守を加えて三種類のラインナップになりました。三種類とも仕上げ砥の掛け方が素晴らしい。元々薄い刃を奇麗に研ぐのは難しい。自分は 寝かせすぎて失敗した事数知れず かと言って立てたのでは刃にならない。流石にプロは巧い。


「清玄・特製肥後守」(標準型)12600円 (株)宗正刃物総本社

刃材:青紙二号割込鍛造 全長165mm 鞘長100mm 刃長65mm 刃巾15mm 刃厚3mm 重量70g

こちらは我々が慣れ親しんだ形状の肥後守である。薄手の刃であるが粘り 腰がありこれまた凄い切れ味を示す。重厚感こそ少ないが 何か不思議な存在感が有る。相変わらず各パーツに非常に丁寧な作りが感じられ箱出し状態で最も切れ味が高い作品である。使い勝手から言えば こちらの標準型の方が使いやすい。不思議なのは何のテクニックも使っていないのに刃の出し入れがスムースなのである。きつくなく緩くなくピタっと薄手の柄の真ん中に刃が収まる。工作精度なのか実に不思議なタッチである。最近宗正刃物ではン万円の玉鋼製肥後守(すぐ売れた!)とか木鞘拵えの肥後守とかを販売している 目が離せないお店である。


「清玄作・黒打馬針肥後守」(笹の葉型) 12600円=宗正刃物 

刃材:青紙二号割込鍛造 柄材:真鍮 全長173mm 鞘長100mm 刃長73mm 刃巾17mm 刃厚2.7mm 重量67g 天然砥手研ぎ仕上げ 桐箱入り 限定20本

2006年7月初旬に宗正刃物から発売された。馬針を名乗るだけ有って 非常に鋭い刃先の形状で 普通の笹の葉型よりも切っ先が相当鋭く感じられる。清玄師の作らしくチキリが独特のカーブを描き長めで抑えやすい。馬針というのは本来乗馬で疾駆し、鬱血した馬の下肢の瀉血に使う鍼の事である。江戸時代には侍のアクセサリーになっていたそうだ。(馬蹄のとげ抜き説もある)写真の5と6枚目でナイフの横に写っているのが 本物の馬針である。(ちゃんとした関の鍛造刃物製品)正面から見ると三角形をしている物で爪楊枝よりやや大きい。成程馬の瀉血に使用するサイズだ。

肥後守の元型となった「平田ナイフ」だが一説によると、当時外科医が瀉血に用いていた「折りたたみメス」が元型になったのでは?という説が有る。だいたいが「平田ナイフ」が折畳み型だったかどうかも結論は出ていないのだが 確かに瀉血器具は笹の刃型より鋭く薄い刃であり この黒打馬針肥後守を少し細身にするとそっくりである。疾病罹患時に瀉血をする乱暴な習慣は明治初期には消滅した。それ以前となると「消毒」という基本概念すら無かったからステンレスで造ったりしていない。という事は最初期の肥後守が この黒打馬針肥後守を縦折りにしてチキリを取った形だったかも知れない。

ワッシャーは表裏共入り、ピンは奇麗に叩いてある。開閉動作はスムースで刃打ちも無い。鞘(柄)も厚手で丁寧な作りである。ちょっと気になったのが 写真は箱出しのままだが刃の先端に薄い傷が両面共に有る。今までに購入した2本にこんな事は無かった。天然砥石で仕上げたそうだが 4枚目の写真の先端部分に有る刃と平行に有る傷である。高額肥後守ゆえ仕上げの品質には注意が要る筈。このシリーズで購入するなら ごく一般的な「角刃」が最も使い易いと思う。


清玄作 清玄特製肥後拵「鎌型」小刀  07年7月購入(株)宗正刃物総本社 ¥12600円(税込)

最下段が鎌型である。

刃材:青紙二号割込鍛造 柄材:真鍮 全長175mm 鞘長100mm 刃長73mm 刃巾18mm 刃厚1.8mm 重量69g 天然砥手研ぎ仕上げ 両面凡座金 桐箱入り 

宗正刃物で扱う清玄作の第四弾である。宗正さんでは一度購入した客に対しHPのアップデートより一ヶ月程早く、カラーカタログを発送してくれる。この為HPがアップデートされる頃には既にモノを入手出来ている仕掛けである。ちなみにこの「鎌型」だが九州方面では「トンガリ」と呼ばれた形状で前の「馬針」よりも一般的で使いやすい形状である。「馬針」は最初期の肥後守が 恐らくこのメスに似た形状だったもので 今回は我々の世代に馴染みの有る形である。大きさはカネ駒の「大」とほぼ同じで厚みが薄手の黒打ち仕上である。とにかく切れ味は実に鋭い。所有する肥後守&肥後ナイフの中で最も切れ味が鋭いのは「スーパー肥後守・武田刃物工場製」だが その次に鋭い。毎回清玄作で感心するのは何の仕掛けもない鞘と刃なのに折り畳む時に実にスムースなのだ。引っ掛かりが全く無く かと言って緩みは全く無い。何故なのか解らないがこんなスムースな感触は清玄作だけである。そして独特のチキリのカーブだが ワンアクションで完全にオープン〜固定まで行える。山童より短いが力の掛かり加減が絶妙である。この四種の中で選ぶなら「清玄・特製肥後守」(標準型)かこの「鎌型」だろう。4種共持っているのはコレクタ位だ。ちょっとだけ我が侭を言わせて貰えれば「特大サイズ」が欲しいのと「柄に刻印名」が欲しいところである。真鍮の価格が暴騰している中で以前の物と同じ価格で販売してくれた宗正刃物には感謝する次第である。尚商品名だが「領収書」に記載された名称を用いた。毎回少しづつ正式名称が違っているのが気になる。


黒打・折畳式刀子「山童・大」 6300円(要問合せ)

刃材:自家製極軟鉄に白紙1号割込鍛造 柄材:自家製軟鉄に黒塗装 全長220mm 鞘長125mm(チキリ含まず)刃長95mm 刃厚4.5mm 刃巾20mm 特徴的なチキリ長が47mm 重量144g

まず 作者は「古代人の鉄」に取りつかれ、高知県の山奥に「工房くろがね」という、製鉄そのものからを始められたわけです。 たたら炉を造り 松炭と砂鉄で三日がかりで「ケラ」(固体と液体の中間?状態の鉄・漢字では金偏に母と書きます)を造り、その鉄を鍛造し........そして出来たのが「山童」です。そりゃあ出来合いの多層綱に青紙を抱かせて鍛接し、というのと一目で一般的肥後守と出来が違うのが判ります。山童は柄の部分も極軟鉄で黒く分厚く、ジョイントピンも一回り太く出来ています。チキリが異常に長く デザインの特徴になっています。これが握った時に抜群の安定感を出しています。難点は普通のナイフケースに入らない事ですが。

製作者は土州湧風という方で最初からプロの鍛冶屋さんではなくアウトドアのインストラクターやらカヌーのインストラクターをされていたそうです。たたら製鉄の講習会なども開いておられます。経歴を略記すると1948年、高知県中村市に生まれる。少年期から鉄に興味を持ち、工業高校時代には溶接工学に強く惹かれ、卒業後関東の鉄鋼会社に勤務する。しかし古里の自然が忘れがたく、1972年郷里にU-ターンして「フィッシングショップおかだ」を起こし、次いで四万十川のレンタルカヌー業「シマムタ共遊国」を起業する。そのかたわらで地域の子供会活動を振り出しに、少年剣道や野外活動の指導等、青少年育成の活動にも取り組んでいる。一方、鉄鋼会社を退いた後も鉄への興味が薄れることはなく、独学で鍛冶技術の研究を始める。さらに材料としての「鉄」に強い興味を抱き、鎌倉時代期頃までなされていたであろう「野だたら」による「ケラ」の生産技術を追求するなど、古代の鉄生産技術の研究も続け、現在に至っているとのこと。

私が愛用し御薦めしている中の一本です。


黒打折畳式刀子「山童・中」 6000円要問合せ 2006/11/25 

刃材:自家製極軟鉄に白紙一号割込鍛造 柄材:自家製軟鉄黒塗装 全長198mm 鞘長113mm 刃長72mm 刃巾19mm 刃厚3.8mm 重量121g

「工房くろがね」のサイトを欠かさずチェックしていたが、たまたま気になってメールを入れて 売れ残りや今後の製作予定を問い合わせた処が「一週間後に新しい物が出来る」という嬉しいお知らせで、早速「中サイズ」の物をオーダーし入手した。サイズ的には この中がカネ駒の「特大」と ほぼ同じになる。手の大きな私にするとベストフィットである。それにしても武骨でありながら「鉄柄」「炭素鋼の刃」「チキリ」「ロック機構を持たない」と基本を押さえた素晴らしいものである。例えて言うならば古典の俳句や和歌の様に、外してはいけない決まり事を守りながら しっかりデザインされていると思う。勿論自由律俳句の種田山頭火がいけないのではないが 一定の決まり事を守りながら自分のデザインを形に出来る事は とても大事な事と思う。

山童は大中小の3サイズが有るが最も使いやすいのが この中型である。デザイン上の特徴の長いチキリが大だと あちこちに引っ掛かるのだ。


黒打折畳式刀子「山童・小」 5800円要問合せ

刃材:自家製極軟鉄に白紙一号割込鍛造 柄材:自家製軟鉄に黒塗装 全長175mm 鞘長102mm 刃長65mm 刃巾17mm 刃厚3mm 重量97g

どうしても気になって他のサイズも欲しくなり「工房くろがね」に問合せたところ、「限りなく中に近い小サイズなら一本だけ作り置きが有る」との御答えで「そ、それ下さい!!」という経緯で 入手しました。写真は大きさの違いを呈示する為 奥が「大」サイズです。

タタラ炉にも浸水したとかで製鉄再開までは時間がかかり 次の制作予定が立たないそうです。でも自作した地金が大事ですから大変です。タタラ炉は何より湿気が大嫌い。

サイズ的には本家カネ駒の「大」と変わらない大きさになります。刃先の形状が洋式ナイフで言う「ドロップポイント」と「スピアー」の中間位な感じもそのままに 普通のナイフケースに収まるサイズになっています。迫力は落ちますが使うのなら「中」サイズということになるのでしょう。コレクター的には三種類とも欲しいのですが..........。最近作者の土州湧風師は現在「陶器作り」と「勾玉作り」にハマっているとの話でした。たたら炉を築く場合 乾燥と粘土が何より大事なため「焼き締め」が必須。 結果「焼き物」にハマるのは当然ですが 何しろ これだけの作品を作られるのですから「浮気」は軽めにして下さい、そうファンは望んでます。

何とも言えない武骨だが暖かみの有る全体像で 切れ味は、物凄いものがあります。人から「市販品で、どうしても一品だけ選べ」と言われると 多分「山童」と下記「肥後型小刀」で悩むでしょう。


球磨 樺山五昭作「肥後型小刀」 8085円

刃材:黄紙割込 柄材:鉄に黒塗装 全長210mm 鞘長117mm 刃長90mm 刃厚3.5mm 刃巾17mm 重量140g 

ネット上では「古川商店」でしか扱っていない。全体の雰囲気は地味だが力強い。武骨な感じでズッシリと重く切れ味が鋭い。全体の大きさは「特大」と ほぼ同じである。白紙かな?と思ったら黄紙だとの由。青や白紙との違いは使っていて、さして感じる事が無く、逆に青だの白だのよりも研ぎ易いという感じがする。刃持ちも決して悪くない。黄紙を甘く見るなかれ、である。肥後守は使いながら研ぎ、緩めば絞めると言う事を繰り返して使っていくもの。この肥後守型小刀なら その繰り返しが楽しく感じられる。とは言っても黄紙だから減るとか言う事は全く無い。白紙のように硬くて研ぎにくいという事も無い。所有している肥後守・肥後ナイフの中では最重量級である。武骨さでは良い勝負の「山童」が144gで微かに重い。刃付はかなり鋭く丁寧な研ぎが施されている。割込の刃は利器材ではなく自家鍛接である。ジョイントピンは太め。鉄製の柄は真ん中が膨らみ上下縁が薄くなっている手の込んだ造り。作者が大手問屋に卸さないため、ユーザーの目に触れにくいが 長年こういう良い物を造り続けている方とうかがった。この肥後型小刀は、納得・感心・御薦め出来る逸品。迷わず「買い」の逸品である。8085円と値は張るが その価値が充分有る。某有名多作家の半額以下。私のイチオシは#1肥後型小刀#2山童(中)である。私が普段好んで使っているのは肥後型小刀である。黄紙って刃持ちが悪いんじゃ?と思ったのだが全然そんな事は無い。しかも研ぎやすくてイチオシなのである。

肥後小刀は「(株)古川商店」に御世話になりました。和式刃物のコーナーです。


FL・ライトフォルダー・カリン「ニングルテラス 守の鍛冶屋」製 ¥4935

刃材:D2 柄材:カリン 全長140mm 鞘長100mm 刃長55mm 刃巾16mm 刃厚3mm 重量25g

これは北海道富良野市の新富良野プリンスホテルにある「ニングルテラス・守の鍛冶屋」というナイフメーカーの作品です。(森の知恵者のことだそうです)肥後守・肥後ナイフに含めるかどうか悩みますが「折畳み」「チキリが有る」「ロック機構が無い」という点を考慮し「肥後守・肥後ナイフの異母兄弟」として掲載します。比較的小型の良く切れる肥後ナイフで柄が「花梨」の単材で出来ています。ジョイント・ピンには両側ともワッシャーが入り結構丈夫な感じです。刃付けも鋭く錆びる部分が無いので水物の扱いには便利です。このFLライトフォルダーには刃材をATS-34にし柄材をアイアンウッドにした高級版¥15700も存在します。中々造りの上品なナイフで これは中々お薦めです。これを見つけた切っ掛けですが「鍛冶屋」と「カスタムナイフ」をキーワードにしてグーグル検索をしたら このメーカー?が見つかりました。メールで「チキリは有るか?」「ロック機構は有るか?」って質問じゃあ 「何じゃ こいつ?」って思われたかな?とにかく変った工房で、五寸釘をナイフにしたという御土産品じみた物を造っていたり そうかと思えばATS34なんていう素材のナイフを造っていたりちょっと気になる工房なのです。写真は刃に焦点や明るさを合わせると柄が暗くなるし柄に合わせると刃が黒く写るということで7枚目は明るさを刃に合わせてみました。結構丁寧な仕上げだという事が判ると思います。カスタムナイフが五千円以下というノリで考えれば宜しかろうと思います。価格以上の物です。


カスタムヒゴノカミ 杉原渓童 作 16800円(税込)2007年3月 つり人社から購入 

刃材:ステンレスダマスカス 柄材:カリンコブ? 全長150mm 鞘長80mm 刃長65mm 刃幅15mm 刃厚3.0mm 重量28g

このカスタム肥後はGoogleで「肥後」「カスタムナイフ」をキーワードにして検索を掛けたところ引っ掛かってきたものです。小振りで軽量のカスタム肥後ナイフです。六枚目の写真が「秋水@大サイズ」との比較です。作者の杉原渓童氏は大阪のカスタムナイフビルダーで、ネット検索したところ御自分のサイトを立ち上げられ 作品の販売も手がけられる様です。このタイプの他にも別タイプのダマスカスではないものも掲載されていました。オーダーしてから約三ヶ月で届いたのですが これを見た時に「ん?どこかで見た?」という印象。つまり比較写真を撮りましたが上の段に有るニングルテラスのFLライトフォルダーとそっくりなのです。もちろんこちらはダマスカス鋼の分や柄材 仕上げの手間の分 価格は高額になりますが、どこを取ってもそっくり。なにか師弟関係でもあるのでしょうか?ニングルテラスの物が価格不相応に良い出来具合なのかも知れません。この二点に共通なのが「少し小さすぎ」という感触です。私の手が大きいのかも知れませんが もう ほんの少しですが大きいほうが使いやすいのでは?と。洋式ナイフでの肥後ナイフ標準サイズ?は「CASE ラスロック」の大きさ(全長160mm 鞘長90mm刃長65mm)だと思うのです。洋の東西を問わず 類似した形状と大きさのポケットナイフが誕生するのが不思議ですね。

2008年2月20Up 御本人のHPが有りました。写真撮り直しました。


「関刻刀」大・ココボロハンドル仕様 IC-CUT製 3200円

刃材 V2三層綱 全長170mm 鞘長108mm 刃長66mm 刃厚2.5mm 刃巾15mm 重量59g 

関市の老舗ナイフメーカー「IC.CUT」社製の現代型肥後守。ネットではMARUOKUネットで扱っていました。真鍮製の柄ではなく ココボロ材のハンドルでお洒落に出来ています。ブレード材はV2三層綱で錆びない上 金属柄ではないなど 肥後守の条件破りに見えますが、シングルピンジョイントであり チキリが飾りでなく実用のため存在しているからです。先端が角形と丸形 大型と標準サイズがあります。仕上げは 流石IC CUTで丁寧な造りです。柄に物凄く淡く「関刻刀」って書いてあるのですが読めますか?(4枚目写真)。時々「あの文字がねえー」と言われるのですが ココボロハンドルの物は注意して見ないと 関刻刀の文字は見えません。価格帯は「カネ駒青紙割込特大」と ほぼ同じです。刃を完全に開いた時に、チキリと柄が一直線になるのは握るにも楽ですし、デザイン的にも優れています。

サビが嫌で 他人と違う洋式っぽいのを欲しい方には特にオススメです。なにしろ洋式ナイフのカスタムビルダー作だと どんな悲惨な出来でも数万円なら安いほうですから。


「関刻刀」大・桧間伐材仕様 IC-CUT製  2200円

刃材 V2三層綱 全長172mm 鞘長102mm 刃長66mm 刃厚2.5mm 刃巾15mm 重量53g 

この関刻刀は刃先の形状で二種類、更に全体の大きさが大小二種類、ご覧の通り柄材に二種類と合計で8種類が有ります。ココボロでは見えにくかった関刻刀の印字が良く見えます。柄材が「ヒノキ」なのですがムクで無塗装です。汚れっぽいかな。しかし出来具合は流石にSEKI-CUTで、丁寧な仕上がりです。何となくココボロ仕様のほうが高級に見えるのは「関刻刀」の文字の為ではないでしょうか?もう少し小さく中心を外して印刷したほうが良かった。この「関刻刀」は刃を出した時に、チキリがグリップと同一の高さになる為 とても使いやすい。


藤原 敏作 肥後守型ナイフ  2006年11月三木特産金物センターより購入 

刃材:白紙ムク材 柄材:パーロッサ 全長220mm 鞘長130mm 刃長90mm 刃巾21mm 刃厚3mm 重量112g 土置き刃紋 ライナーロック 刃は天然砥石二種の使い分けで研がれている。

もう見た瞬間から只者ではないカスタムナイフである。頁の上に有る「元佑銘刻印」の多層綱肥後守を購入した時に同時に「三木特産金物センター」から入手した。刃が包丁で言うところの「本焼」で 付け鋼ではない。藤原敏氏の名前を浅学の為存じ上げず 販売店様から御教示頂いた文章を転載します。

■藤原さんは親の代まで鍛冶屋をされていたのですがご本人は暫くの間、会社務めをしておりました。しかし代々引き継がれてきた血が騒いだのか、結局は会社を辞めて鍛冶を始められたのです。元々日本刀に関する知識が豊富でしたのでそれを自らの作品に応用。徹底的に強靭な刃を鍛える為に更なる研究を怠らず、大学教授の協力で鋼の組織を顕微鏡で観察するという事までされました。また藤原さん自身猪狩りの名手でもありまして、その経験から開発した狩猟刀は丹波篠山を中心に活躍する猟師さん達の間で評判となっています。藤原さんのナイフの特徴はとにかく使い勝手の良さ、そして刃の丈夫さに尽きると思います。

見た段階で只者ではない迫力があり凡百のカスタムでは対抗できません。経歴を拝見すると岩崎重義氏と味方屋の日野浦司氏や社長鍛冶(刀匠)の佐藤重利氏の経歴とカブる様な気がします。狩については先代(三代目)の故西根政剛氏を(あちらは熊でしたが)彷彿とさせますし 何か和式鍛造の刃物に関わる人は どこか似たような部分があるような気がします。これはチキリが無いのですが 畳んだ状態からジョイント・ピンの付け根を押さえると刃が迫り出します。実にシンプルなデザインです。ライナーロックの精度も高く、一発でパチっと所定の位置で固定されます。バックロックよりも構造が単純な代わり 製造が難しいとのことです。

カスタム系で御薦めの物を選べ!と言われると 相当迷いそうなカスタムが また手元に届いたわけです。上記サイトから買い物カゴを使って このナイフが発注できる様になりました。

追記)藤原さんの このカスタム肥後のシースナイフバージョンを入手しました。

こちらは白紙ですが「本焼」ではなく通常の熱処理を施されています。少しシース板の方が小振りです。切れ味に関しては相当な代物ですが やはり「本焼」に一歩及ばない感じです。欲しい方は時々Yahooオークションで三木特産金物センターさんから出品されていますから見逃さないように。